Bの響宴

リタイヤを迎えた親のための認知症予防プログラム - 「ひとまず家族でブログやります。」(B型一家ほぼ全員参加型企画)

【B3】すなちゃん、健やかなれ。

ここのところクマによる被害のニュースが続いている。

クマといえば、山に山菜を採りにいって被害に遭うというイメージが強かったが、今年はバス停でバスを待っているだけで襲われたりしている。

過日、東北地方で山に帰りそびれた母熊と小さな二頭の子熊が捕獲されるニュースがあった。

母子が逃げ込んだ小屋を行政やら警察やら報道陣らが取り囲み、大変な騒ぎだった。

母子の行く末を案じていたワタシだったが、映像にちらりと映った檻の中のちび達の姿を見て、これじゃいくらなんでも殺せまいと安堵した。

が、それもつかの間、あっという間に殺処分のニュースが流れてきて驚いた。

あとから知ったが、熊の専門家らが集まる団体が現場に赴き、団体自ら山に放つ「放獣」を行うか、それが無理なら母子を引き取ると申し出ていたようだ。

これに対し行政は、近隣の熊の施設に相談すると言ったらしいが、結局、現場で待ち続ける団体になんの告知もなく、件の施設に相談することもなく、聞く耳を持たないまま殺処分という行為に至り、すべてが終わった後でようやく彼らに報告をしたらしい。

SNS界隈で物議を醸しても仕方がない対応だと思う。

母熊とは別の檻で鳴いていたちび達を射殺するなんて、よくできたものだ。

 

以前、北海道でもあった。

80センチぐらいのヒグマの子熊が射殺された。

行政からの要請で駆り出されたハンターは、いずれ母親のもとに帰るので殺す必要はないと言ったのに、行政と警察にどうしても殺してほしいと言われ、やむなく射殺。

耳を塞ぎたくなるような酷い話だが、これには後日談がある。

このハンターさん、行政と警察に協力したにもかかわらず、後日、銃を使った場所が悪い(危ない)と銃刀法違反で書類送検され、公安委から銃所持の許可を取り消された。

開いた口が塞がらないほど酷い話である。

その後、ハンターさんは提訴、結果として公安委の取り消し処分は違法と認定され、勝訴した。

そして、さらに後日談。

つい最近、同じエリア内にある公園で親とはぐれて衰弱している子熊が見つかった。

駆り出されたのは同じハンターさん。

現場に赴いたハンターさんは駆除の必要なしと判断。今回は行政も受け入れた。

子熊の処遇について話し合いや調整がなされ、結果、この子は旭山動物園に引き取られ、「すなすけ」と名付けられた。

子熊が殺処分されず、また行く先も決まり、ほっとした。

しかし勝手なもので、名前が決まったときは悲しさも覚えた。

この子はもう二度と山には戻れないのだ。一生を園内の施設で過ごす。

園長がどこかで語っていた、動物の本質としての頑なな生き方について思い出した。

 

今は一般公開もされているすなすけ。

ワタシのようにSNSを通じて彼の成長を見守っている人も多いだろう。

ただ殺せばいい、すぐ殺せばいい、とりあえず殺しておけばいいという思考の網にとらわれず生き延びた彼が、健やかに暮らしていくことを祈り続けたい。

 

今日の読売新聞の社説もクマ被害を取り上げていた。

駆除一択の考えとは一線を画し、①「クマが自由に生息できる奥山」、②「里山などの緩衝地帯」、そして③「クマを侵入させない人里」をそれぞれ区分・管理し、共存を図るべきと説いている。

現在は、過疎化の進展で、クマの住処と人間の住処の間にあるべき里山の管理が行き届かず、奥山と似た環境になっているという。

元来クマは臆病な性質らしい。

どんぐりを求め、境界なき里山を通り過ぎ、いつの間にか人里に紛れ込んだ彼らが人間に出くわしたとき、その驚きは如何ばかりだろう。

なんとかかつてのような環境が戻ってきてほしい。

行政が音頭をとって里山復活の発起者となり、人間が率先して共存の道を用意すべきではないだろうか。

そのために授けられたものが知恵というものなのではあるまいか。

 

★B3

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